遺言書と相続登記(不動産の名義変更)

 遺言は、人生最後の意思表示であり、死亡によって効力が生じます。遺言書に不動産を相続人に対して相続させる内容が記載されていた場合、相続登記(不動産の名義変更)の申請を登記所(法務局)に対して行う必要があります。遺言書で具体的に遺産分割方法を指定することにより、遺産分割協議(相続人全員の同意)を省略して、受遺者(遺言で相続する人)だけで相続登記の申請ができます。ただし、遺言書に記載がない遺産がある場合、包括的な割合で承継を指定されてる場合は、別途 遺産分割協議が必要になります。よって遺言書の記載内容は具体的かつ明瞭でないと紛争を引き起こすリスクがあります。

 また遺言によって、相続人以外の人(孫や親族、内縁者など)に対しても遺産を承継させることができます。この場合は「相続」ではなく「遺贈」を原因とする登記手続をします。

遺言書による「相続」登記 手続の流れ

1.死亡(遺言効力発生)、役所への死亡届等の提出、相談。

      

2.遺言書の種類の確認  自筆の遺言  家庭裁判所の検認手続  検認後

                             当事務所で対応可能。

  公正証書遺言または法務局保管の自筆遺言(検認不要)

      
3.相続人調査(戸籍謄本等の取寄せ)。 当事務所が調査。
  ※被相続人の除籍謄本と相続人の戸籍謄本が必要。

      

4.相続登記(不動産の名義変更)の申請。 当事務所が代理申請。

      

5.登記完了。権利証(登記識別情報通知)と遺言書のお渡し。

自筆の遺言書が見つかった時の対応/検認手続

 自筆の遺言書が発見された場合、そのままの状態で家庭裁判所の検認手続を受ける必要があります。開封されていたり、そもそも封がなくても検認手続は必要です。検認手続とは、家庭裁判所で遺言書を開封して中身を確認する手続です(内容や解釈について確認し証明するものではありません)。事前に申立書を作成して提出し、定められた期日に家庭裁判所に出向いて検認を受け、遺言書に裁判所の検印を押してもらいます。遺言書の検認手続を経ないと相続登記や預貯金の相続手続などの遺言執行は行えません。

 なお、公正証書の遺言書または法務局の保管制度を利用した自筆遺言書は、検認手続が不要です。

 また、遺言書に遺言執行者の記載がある時は、速やかに遺言執行者に連絡する必要があります。

予防法務としての遺言書作成/相続対策としての遺言(他の方法との比較)

◆予防法務として遺言書を作成する意味

 遺言書によって遺産分割方法を指定しておけば、残された相続人は故人の意思を書面によって知ることになり、その意思を前提として遺産承継することができます。また正確な財産(遺産)目録が遺言書に付いていれば、遺産の範囲や有無についても明らかになります。

 以上から、遺言書の作成は自ら遺産の処分方法を指定することによって、残された相続人間の紛争抑止に一定の効果があると考えられます。ただし、内容が具体的かつ明瞭でないと、偽造を疑われたり内容の解釈を巡って紛争になったりするリスクがありますので、その点には十分配慮が必要です。

◆相続対策としての遺言(他の方法との比較)

 財産を承継させる方法としては、遺言書の作成以外に親子間での贈与や売買などがあります。自分の希望と実情に合った方法を選択するため、他の方法との比較検討を お勧めします。

 → 相続対策(財産の承継方法について)はこちら

遺言書の作成について

 遺言書に記載する内容は、財産承継に関すること及び法律で定められた特定のことです。葬儀や埋葬に関することも記載できますが法律的な効力はありません。これらについては相続人が行うか、または別途 死後事務委任契約を利用する必要があります。

 遺言書の作成はシンプルなものであれば簡単にできます。ただし必要事項(日付や署名押印など)の記載と、第三者が読んで客観的に理解でき、かつ解釈に疑義が生じない内容でないと、無効や紛争の原因になります。これらに不安がある場合は、専門家の助言や指導を受けて作成することを勧めます。

遺言書作成のメリット/デメリット

◆遺言書の作成を検討すべき状況

 1.相続人間の紛争を予防する為、自ら遺産分けの方法を指定しておきたい。

 2.相続人にならない親族や内縁者に遺産を分けたい。

 3.相続人となるべき者が、意思表示できない、行方不明等により遺産分割協議の困難が予想される。

◆メリット

 1.遺産分割(遺産分け)の方法を具体的に指定できる。

 2.遺産分割協議(相続人全員の合意)を要しない遺産承継ができる。

 3.相続人を指定することにより、他の相続人(行方不明者など)を除外できる。

 4.遺言者 自らが遺産分割方法を指定することにより、相続人間の紛争防止に寄与できる。

◆デメリット

 1.遺言書の記載内容が具体的かつ明瞭でないと、相続人が混乱する。

   対策…専門家の指導を受けて遺言書を作成する。

 2.遺言で除外された相続人や不利益を被る相続人の遺留分までは排除できない。

   対策…遺留分の請求に対して代償できる金銭を準備しておく。

 3.遺言書の有効性(遺言書作成時の意思能力不足)が問題になる可能性がある。

   対策…公証役場で証人立会いのもと、公正証書で遺言書を作成する。

 4.遺言書の紛失や忘失などのアクシデントで、遺言が実現されない可能性がある。

   対策…公正証書での遺言書や、法務局の遺言書保管制度を利用する。

遺言書の種類(自筆証書遺言と公正証書遺言)

◆自筆証書遺言(自筆の遺言書)
 自分で作成する遺言書です。全文(ただし財産目録は除く)を自筆する必要があります。必要事項の記載洩れや解釈困難な文章だと無効になる可能性があります。また保管は自己責任なので紛失の可能性もあります。なお財産目録を作成して付けることにより遺言書の内容が具体的になり信頼性が高まります(財産目録についてはこちら)。

 遺言執行には、前提として家庭裁判所の検認(遺言の確認)手続が必要ですが、法務局の遺言書保管制度を利用することで検認が不要になります。また保管制度の利用で紛失の恐れもなくなります。

◆公正証書遺言

 本人が公証役場に出向いて、証人の立会いのもと、公証人に作成してもらう遺言書です。偽造の疑いがなく、内容の信頼性も高く、原本保管により紛失の心配もありません。

 遺言執行には、家庭裁判所の検認は不要で、作成時に交付された正本(または謄本)をそのまま利用できます。

 当事務所では、相談・遺言書(案)作成・公証役場[公式HP]への付添い等の支援事務を行っています。
◆自筆証書遺言と公正証書遺言の比較

種 類 費 用 信頼性 原本保管 家裁の検認
自筆証書遺言     なし    低い※1    なし※2    あり※3
公正証書遺言     あり    高い    あり    なし

※1…専門家の指導により高めることが可能です。

※2…法務局の遺言書保管制度を利用できます。

※3…法務局の遺言書保管制度を利用すれば検認は不要になります。

法務局の遺言書保管制度の利用(「自筆」の遺言)

 法務局の遺言書保管制度は、自筆証書遺言(自筆の遺言書)の欠点を補ってくれます。令和2年7月10日から開始されています。

 保管手続の利用には、遺言書を作成した本人が、日時を予約して保管所(法務局)に出向く必要があります。司法書士が代理で手続することはできません。当事務所は遺言書の作成指導、保管手続に関する説明と、申請書類の作成および手配、必要に応じて保管所への付添いが可能です。

◆メリット

 1.紛失のリスクがなくなります。

 2.遺言執行に際して家庭裁判所の検認手続が不要になります。

◆デメリット

 1.保管することが目的なので遺言書形式のチェックだけです。遺言内容の指導は受けられません。

   対策…専門家の指導を受けて意思に沿う内容の遺言書を作成し、制度を利用する。

◆手続の流れ

 1.相談、打合せ、保管手続について説明。

             ↓

 2.自筆の遺言書作成、保管手続に要する書類の作成・手配。遺言書以外は当事務所が作成。

             ↓

 3.保管所(法務局)に日時を予約。当事務所にて案内。

             ↓

 4.予約日時に、必要書類等を携えて保管所(法務局)に出向いて申請、即日完了。

                             希望がある場合は当事務所が付添います。

遺言執行者の指定

 遺言執行者は遺言執行を行う権限があります。よって遺言執行者を定めることにより、相続人の関与なく遺言執行をスムーズに進めることができます。なお受遺者(遺言で財産承継する人や相続人)自身も遺言執行者になることが可能なので、遺言書作成の際に予め指定してもらうケースが多いです。遺言執行者がいない場合、相続人に協力してもらう又は家庭裁判所に選任してもらう必要が生じ、この点において遺言執行者を指定しておくことは重要です。

 遺言執行者は財産を承継する相続人自身が指定されることが多いですが、他の相続人の疑いや紛争を避ける為、あえて第三者(弁護士や司法書士)を指定することがあります。当事務所では遺言書の作成時に依頼を受けて遺言執行者を引き受けますが、明らかに紛争の可能性がある場合は訴訟を想定して弁護士に依頼することを勧めています。

遺留分について

 遺留分とは、遺言によって不利益を受ける相続人の為、法律で定めた一定の相続分を保証する制度です。不利益を受けた相続人が遺留分の権利を行使することにより、受遺者(遺言で財産承継した人)に対して金銭請求することができます。

 よって遺言内容が実現されても、財産を承継した人(受遺者)は不利益を受けた相続人から遺留分侵害額を請求される可能性があります。この遺留分を排除する方法はありませんが、遺留分の権利は法律で定められた期間内に行使されなければ自然に消滅します。

 なお、将来の相続人が事前に遺留分を放棄することはできません。

◆対策

 1.不利益を受ける相続人の遺留分を考慮した遺言内容にする。

 2.請求されることを想定して、支払う為の金銭を予め準備しておく。

事務内容と費用(手数料)の補足

◆事務内容(補足)
 1.遺言書に基づく相続登記と関連する手続および事務(相続人の調査など)を行います。

 2.遺言書の作成指導。公正証書の遺言書の作成支援。

 3.法務局の遺言書保管制度の申請支援。

 4.自筆証書遺言の検認申立書の作成と提出代行。

 5.遺言執行者の受任と執行事務。

 6.その他、遺言書に関する相談。

 7.相談・見積り・依頼はこちらから

◆費用(手数料)の補足

 1.手数料一覧(料金表)はこちら
 2.自筆遺言書の作成は、内容がシンプルであれば相談や指導を含めて40,000円(税抜)ほどです。

 3.遺言執行者の事務手数料は、作成に関する費用とは別になります。

 4.法務局の遺言書保管制度の申請支援については詳細が明らかになり次第、手数料を検討します。

 5.費用の計算例(料金表で計算した場合)

   遺言書(公正証書)による相続登記を行う場合

   ・自宅(土地・建物×各1筆、名義人は被相続人、評価額1,000万円)。

   ・相続人は配偶者と子2人で、遺言書(公正証書)により、配偶者が単独で相続する。

   ・相続人調査(戸籍謄本等)は依頼者にて準備した。

事務内容 手数料 実費 登録免許税 備 考
相続登記 40,000円 0円  40,000円 1,000万円×0.4%(税率)
相続人調査 0円 0円 依頼者にて準備した
相続関係図作成 3,000円 0円  
事前の登記事項調査 200円 800円 不動産×2筆
交通費・郵送費 3,000円 3,000円 基本定額
筆数加算 2,000円 0円 不動産×2筆
登記事項証明書 600円 1,200円 不動産×2筆
小計 48,800円 5,000円  40,000円  

                        費用総額=93,800円(消費税は除く)



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